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2006年3月18日 (土)

論評 :"Thinking about Mechanisms"

"Thinking about Mechanisms"

Machamer,P., Darden,L., Craver,C.F.(2000) Philosophy of Science: 67, pp.1-25

【内容】

神経生物学と分子生物学におけるメカニズムによる説明を定式化する。

メカニズムとは規則的変化を生じるように組織化されたentityとactivityである

(単なるentityの相互作用の集合ではない)。

activityは変化を生じる(producue)ものであり、その連続性は矢印でしばしば表現される。

メカニズム論は存在的にも認識的にも適切なものである。

【論評】

①論文筆者らはentityとactivityの二元論を明確に主張するが、その根拠が不明確である。

なぜentity間の相互作用をもってメカニズムと見なしてはならないのか?確かに、「メカニズムは事を成す(do thing)」(pp.5)とも言えるが、「メカニズムにおいては相互作用と状態遷移がある」という言い方では何が不十分かについて、説得力不足である。

②メカニズムはentityとactivityから成ると言うが、メカニズム間の階層はどのように表現されるのか?

例えば、あるメカニズムAが、entityである{a,b,c...}とactivityである{p,q,r...}から構成されるとき、そのAを要素とする高次のメカニズムXがあるかもしれない。すると、メカニズムXにおいてAはentityであるかactivityであるか、いずれかである(メカニズムはentityとactivityから構成されるから)。Aはメカニズムであると同時にentityである、ということは許されるのか?

③因果性(原因)ついての分析、および必然性についての分析が、不明確である。

④メカニズム論は、神経生物学と分子生物学における説明の実例を扱える点で、長所を持っている(例えばDNモデルでは、法則を用いない(と思われる)生物学的説明を、うまく扱えないだろう)。メカニズム論は、神経科学、認知科学、心理学などの高次科学への応用が期待できる。

by KO

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コメント

思ったこと:彼らのやっているのはモデル構築の一種なんだと思うけど、なぜわざわざそれをメカニズムと言い換えるのでしょう?
これには、フィールド間の還元という問題がからんでいるんでしょうか?例えばモデルにしてしまうとそのレベルの間の関係が付けづらいけど、メカニズムなら入れ子として連続的に扱える、とか。還元問題は法則志向的科学哲学の十八番だったけど、モデルについてもそのような試みは為されているんでしょうか?

投稿: OTK | 2006年3月18日 (土) 23時41分

なるほど、その視点は鋭い。直観的には、モデルの中でも階層組織をもつものがメカニズムと言えそうです。そしてMDCは還元というよりはメカニズムの統合という表現を好みます。しかし、メカニズム発見をもって還元とみなす人々はおります(例えば Waters1990, Sarkar1998)。ただし彼らはこれを「非形式的還元」と読んでいる通り、メカニズムを通じた還元モデルの定式化というのは一切なされていません。のでいずれ私はやろうと思います。メカニズムなるものが本質的に抱えている多様性からいって、定式化への道のりは長いかもしれませんが…。

投稿: KO | 2006年3月19日 (日) 02時27分

偶然このブログにたどり着きました.
メカニズムとモデルの関係は興味深いですね.
著者の一人曰くモデルというのがよくなにかわからないからそれをなしでいくためにも,メカニズムというのを定式化しようとしているようです.
予測された通り,メカニズム同士を入れ子構造にしてどんどんどん高次の現象も機械論的に説明していこうという流れがあるようです.とくに三人のうちのCraverとBechtelは心的現象の機械論的説明にとりかかっています.別の流れでは,海洋学,経済学とかを機械論の枠組みで見てみる,とかもやっているようです.いずれにせよ,物理学は機械論的にはいかないのでアンチ還元主義という雰囲気が漂います.

activities, 還元, 因果性とメカニズムの関係がおっしゃる通り一番彼らのネックだと思います.まだまだ論文が量産されているので機械論分野ではどんどん新しいのが今後出てくると思いますが.

投稿: urbe | 2007年1月21日 (日) 08時23分

urbe様、コメントありがとうございます。
ご存知かもしれませんが、こんなワークショップがあったようです。
http://mechanism.ucsd.edu/~bill/ModelsAndPrediction/

全体の流れとしては、活動とか因果性とか哲学的な問題を扱ったらまあきりがないけど、とりえあず現象を上手く説明するようなモデルの立て方を考えましょう、という感じなのでしょうか。個人的には、気象学(海洋学も)などで使われているモデルがどんなものなのか、あまり良く知らないので興味があります。

投稿: OTK | 2007年1月23日 (火) 22時48分

なるほど,ベクテルはモデルという言葉を沢山使うんですね.モデルとはなんなんでしょう.

MDCが自信を持ってるのは,分子生物学の範囲内のようですね.その範囲内に限れば,かなり機械論ですっきりと筋が通りそうです.しかし進化生物学ですらまだ機械論的かどうかはっきりしないそうです.機械論が気象学などそういう巨大なものにあてはまるのか未知数のようですね.私は高次の心的メカニズムに興味があるのですが,心理学が機械論的なのかどうか,ちょっとまだ予想もつきません.私も最近機械論の文献を読み出したところなので,どうなるのだろう,と思っています.

ちょうど,生物学の哲学のゼミをとることになったので(教科書がSex and Deathでした!),またおじゃまします.

投稿: urbe | 2007年1月24日 (水) 10時13分

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